薬膳の書

* * * 第四十弾 * * 「蕎麦(そば)」 * * *

そば米(左)/玄そば(右) ゆずそばや茶そばも

 そばは穀物として分類されているが、他の穀物と違いイネ科ではなく、タデ科原産地はアジアで、約4000年前には栽培されていた。日本でも弥生時代の遺跡から出土しており、古くから栽培され、江戸時代の頃よりそば切り(麺状のそば)が浸透していった。最大の主産国は、ロシアとポーランド。各国で、スープやマフィンの材料としても使われている。
春に種をまいて夏に収穫するそばを「夏そば」といい、主な品種は北海道産の「牡丹そば」、長野県産の「しなそば」がある。夏に種をまいて秋に収穫するそばを「秋そば」といい、大部分はこの秋そば。東北「階上早生(はしがみわせ)」、長野「信濃1号」などがある。


−効能・薬効−
特有成分「ルチン」が含まれており、これは毛細血管を丈夫にする働きがある「ビタミンP」の一種。脳溢血や出血、凍傷の治療に使われる成分。また、「ポリフェノール」の親戚で抗酸化物質。血管壁を強化するコラーゲンの生成を助け、毛細血管を丈夫にし、動脈硬化を予防する働きがあるルチンを多く含む食品は、そばの他に、柑橘類、さくらんぼ、杏など。
コレステロールを排出する食物繊維が豊富で、腸に適度な刺激を与え、便通を促す。ビタミンB1も多く含まれており、糖質の代謝を助け、疲労回復の効果がある。体質により、アレルギーをおこすこともあるので要注意!!

−ルチンを活かそう!−
★野菜をとろう!
ルチンの働きを活かすには、ビタミンCとの組み合わせがよい。

★「そば湯」を飲もう!

ルチンは水溶性なので、そばをゆでると流れ出てしまう。そば湯を飲むと、溶け出したルチンを摂取できる。冷たいそばを食べ終えた後に、残ったおつゆにこのそば湯を足して飲む。
ただし、ゆでて売っている麺や乾麺のゆで汁には、そば湯の効果はありません。


★そば粉の割合の多いものを選ぼう!

一番よいのは十割そばで、そば粉100%のものがよいのだが、そばは、小麦粉と違いつながりにくく、小麦粉ややまいも、卵などでつなぎを加えることが多い。そば粉80%を含んだものを「二八そば」といい、この割合までが、ルチンの効果を期待できる。

★茹でずに食べよう!
そば粉を熱湯で練ったソバガキは、ゆでずに食べるので、そのままルチンを摂取できる。
同様に、マフィンやクレープなどの時もそのまま摂取できる。


玄そば・そば米・そば粉って?
「玄そば」は、収穫したそば殻をつけたもので、殻を取り除いたものを「そば米」または「むきそば」という。そば焼酎などのにも加工品に用いる。玄そばを製粉したものが「そば粉」。
製粉の段階で種類が分けられ、一番粉=内層粉は、最初に取れる粉。白くさらさらしており、でんぷんが多い。皮が混ざっていない純度の高いものを「御膳粉」「更科粉」「白雪粉」という二番粉=中層粉は、玄そばの胚乳部分が混じり、やや黄色い。三番粉=表層粉は、胚芽や種皮(甘皮)が多く含まれ、栄養価も高い。玄そばをそのまま製粉したものを全層粉という。
黒っぽいそば、白っぽいそばがあるのは何故?
そばの実は外側は黒っぽい色で、内側は真っ白。甘皮を含んだそば粉を使えば出来たそばは黒っぽくなり、芯の部分に近いところだけを使えば白っぽくなる。ルチンパワーを活かすには、白っぽい更科そばより、黒っぽい藪そばの方がよい。味は、どちらとも美味しい。
そば茶って?
そば米を焙煎して作られる。たんぱく質、ビタミン類、ルチンなどが豊富に含まれ、タンニンやカフェインを含まないので嗜好飲料というよりは健康茶なのかも。
『せいろ』と『ざる』はどう違うの?
『せいろ』は蒸し器のことで蒸篭と書きます。昔はそばを茹でないで蒸し器で蒸して、蒸し器のまま出して食べたので『せいろ』と呼ばれました。『ざる』とは文字通りざるに盛って出したので『ざる』と呼ばれました。今となってはどちらも同じで、呼び方が違うだけ。殆どのお店がせいろを使ってもりやざるを出しています。

−日本人ならそば殻枕?−
現在、枕の中は、そば殻のものだけでなく、羽毛、パイプ、磁気のもなど様々ですが、やっぱり、枕はそば殻でないと!という方も多いはず。
頭寒足熱(ずかんそくねつ)が健康によいとされ、頭だけをひんやり冷やしてくれる効能があるそば殻は、安眠の必需品なのです。

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