薬膳の書

* * * 第二十弾 * * 「わさび」 * * *

刺身・お寿司、そして、蕎麦(そば)の薬味と言えば「山葵(わさび)」ですよね。

 魚介類の生食を好む日本人にとって欠かせない香辛料ワサビ。食用にするのは、日本と中国。日本での生産が盛んなので、日本の特産ともいわれている。山間の渓流に自生し、野生に近い状態で栽培が行われている清涼な流水で栽培するものを「沢ワサビ」「水ワサビ」 畑で作るものは
「陸(おか)ワサビ」「畑(はた)ワサビ」と呼ばれる。普通ワサビと言うと、水ワサビ、沢ワサビを指す。
 ワサビを漢字で書くと「山葵」これはワサビの葉が、葵(あおい)のご紋でおなじみ、葵の葉の形と似ているところからきている。   −アブラナ科−


−薬効−
あの独特のツーン!とくる辛みは、噛んだりしたとき、シニグリンという配糖体が酵素によって分解され、カラシ油を作るためといわれている。
糖質、タンパク質、ビタミンB1、C、カルシウムなどを含む。 魚介類などの生ものに使うのは、風味で生臭さを消すということと、殺菌作用があるためでもある。また、胃を刺激して消化を助け、食欲を増進させる働きがある。 現在、粉ワサビの主体は西洋のワサビと言われる「ホースラディッシュ」
カルシウム、鉄分の含有量は、本ワサビより多い。 ホースラディッシュも消化を助け、食欲増進によいとされている。ステーキやローストビーフに添えられる事も多い。
※粉ワサビの溶き方のコツ
小さめの容器に粉ワサビを入れ、人肌くらいのぬるま湯ですばやく溶く。箸よりも指で溶いたほうが、キメが細かく出来上がる。しばらくフタをするか、容器を伏せて風味をだす。

−風味を味わうワンポイント−
ワサビを味わう最大のポイントはおろし方!風味を満喫するためのワンポイント。ワサビは、金気(かなけ)を嫌う食材。洗うときは、たわしで汚れを落とし、流水ですすぐ。葉を切り落とし、葉の付け根の方からおろす。
金属製のおろし金ではなく、陶製かサメ皮のおろし具の目の細かい所で、ゆっくり円を描くようにすりおろす。時間がたつと、風味も辛味もとんでしまう。食べる直前におろす。砂糖をほんの少し加えると、辛味が増します。
 風味がなくなるので、できるだけ食べきるのがよいが、保存する場合は、ぬれた新聞紙に包んで冷蔵する。


−産地−
産地として有名なのは、静岡県伊豆の天城山、長野県の穂高、東京都の奥多摩など。関西では、鳥取、島根を中心とした山陰地方で栽培している。
陸ワサビとして知られているのは、奈良県月ヶ瀬。
伊豆天城山地方のワサビの葉柄や茎を酒かす漬けにした「わさび漬け」は、土産物として有名である。

−歴史−
最も古い記述は918年。927年頃は、全国から朝廷に献上されてきたとの記述も残っている。庶民的になったのは、1800年「江戸前寿司」に利用されてから。サバ、イワシやコハダなどの生臭さを消すためにすし屋で使ったのが、江戸で流行して、にぎり寿司が工夫されてから、庶民に定着した。
−栽培−
冷涼な気候、清澄な湧き水、年間を通して一定の水量と水温、水質。北面もしくは陰の緩い傾斜地が適地。
収穫できるまでに、1〜2年かかる。
青茎が一番多く、辛味が強く品質がよい。
花ワサビは、花が開きすぎていないものがよい。

根茎は、おろして魚介類と一緒に食べる事が多い。刻んでお吸い物にしても風味がよい。葉や花ワサビは、ゆでてアク抜きをし、おひたしや和え物に。残った葉柄や根つきの部分は、刻んで酒かすに漬ける。
 ワサビ茶漬けも人気があり、これは、ワサビの葉と茎を刻んで乾燥処理をしたものに調味料や海苔などを混ぜて保存の利くフリカケにしたもの。
すべて無駄なく利用できる食材。刺身、お寿司、おそば、お茶漬け・・・
日本人とは、切ってもきれない非常になじみ深い食材ですね。

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